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それは寒い冬の日のことだった。
ヨヂカは朝早くから起きて、掃除をしていた。
「ヨヂカ、水を汲んでおいで」
母がヨヂカにひしゃくを渡した。
昔は家の前にある井戸に水が湧いていたが、すっかり枯れてしまい、今では遠くの湖まで汲みにいかなければならなかった。
それは、もちろんヨヂカの仕事だった。
「はい、お母さん」
小さなひしゃくを使って、湖と家を何度も往復しなければならない。水汲み場一杯に水を張らなければ、水がない。
毎日しなければいけないヨヂカには遊ぶ暇などなかった。
姉は髪を梳きながら、ヨヂカを横目で見た。
「早くしなさいよ、のろま」
薄笑いを浮かべてヨヂカを見下す姉は、ヨヂカの瞳には映らない。
ヨヂカは姉の言葉を聞きつつも、無言でひしゃくを握り締めた。
「行ってきます」
外は寒い。家は裕福ではないので、温かい羽織を身に付けられずに、ヨヂカは一人、湖を目指す。
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