1.悔悟<side亨>

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俺が坂井を初めて見たのは この中学に赴任が決まって 初めて生徒の前に立った始業式。 始業式中にも関わらず 立ったまま、堂々と居眠りしている坂井の姿が目に止まった。 ・・面白いやつ。 それが第一印象だった。 大学で教職免許を取って、そのまま難なくこの中学への赴任が決まって 特に何ってこともなく、坂井のクラスの数学を担当した。 中学二年生の坂井は、子供らしいあどけなさが残っていて 単純に可愛らしい女の子だったように思う。 成績が飛び抜けていいわけじゃなかったが 男女問わず、坂井は頼れるお姉さん的存在のようで そんな姿を横目に見ながら、自分の中学校生活を思い出していた。 そうこうしているうちに、一年はあっという間に過ぎていき 縁があるんだかないんだか、翌年は受験生の数学を担当することになった。 とはいえ、坂井のクラスの担当は外れたんだが。 それでもなぜか、坂井は俺に数学を聞きに来る。 それがなぜなのか・・ それが解らないほど、俺も鈍感な男じゃない。 ただあの時 『気づかないフリをしなければ』 そう・・思ってしまったんだ。
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