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つないだ手を見つめてほほ笑みあう。
私たちの他には二、三組の花見客しかいなかった。
「日南……」
「ん?」
桜の木の下で向かい合う。
かなうの目を見ただけで、泣きそうになってしまう。
「ありがとう。今日を迎えられたのは、日南のおかげだ。
日南に出会って俺は変われたんだよ」
「ううん。お礼を言うのは私。
かなうにいっぱいいっぱい笑顔をもらえたもの」
かなうはくすぐったそうな顔をして、ちょっとそっぽを向いた。
初めて私の車の助手席に座ったときの横顔を思い出す。
「しばらく淋しい思いさせるけど……日南との未来のためだけに俺頑張るから。
日南も一緒に頑張ろう」
「うん。
かなう、本当にいい顔になったね」
「そう?」
「うん。すごく……」
「もっといい顔になって迎えにくるよ」
「うんっ……」
「日南──」
不意にかなうは私を抱きしめた。
「……どうしたの?」
「日南の涙見たら俺も泣くから。
こんなとこで泣いてたら恥ずかしいだろ?」
「こうしてる方が恥ずかしいよ……」
「いいの!」
「もう……」
「日南も、もっとぎゅってして──」
私は泣き笑いで、かなうの背中に回した腕に力をこめた。
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