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しばらくして身体を離すと、かなうの目に涙が光っていた。
「かなうが泣いたら駄目だよぉ……せっかく我慢してたのに──」
「これは泣いてるんじゃないの。花粉症!」
かなうは私の涙を指で拭って、髪をくしゃくしゃにかき回した。
駐車場に戻り、私は自販機で缶コーヒーを買ってかなうに渡した。
「マックスコーヒー以外も飲めるようになったものね」
かなうが笑って、私の頭をつつく。
「ありがとう。車の中で飲むよ。
さぁ、行くか──」
かなうは勢い良くそう言って、ドアを開けエンジンをかける。
その瞬間に、こらえていたものがあふれだした。
車に乗り込もうとするかなうの手をとって強引に引き寄せる。
「行かないで──!」
「日南……」
「行っちゃやだ! 行かないで! ここにいて──!」
かなうの両手をつかみ揺さぶって号泣する。
子供の癇癪(かんしゃく)のように。
「日南っ──」
かなうは私の手をつかむと、その胸に私を抱きこんでくれた。
「ごめん……ごめんね」
ごめんと繰り返し、優しく優しく背中を撫でて……。
「愛してるよ。日南」
「……私もっ……私も愛してる……」
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