†あの日の桜の下†

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    俺は車を走らせる。 あの場所へと。 3年の間に俺たちが逢ったのは何回だったのだろうとスケジュール帳を見てみた。 17回だった。 二ヵ月に一度、俺から日南子に逢いに行った。 そのたびに想いが変わらないことを確かめあい、日南子は必ず俺を励ましてくれた。 別れ際、日南子は必ず泣いた。 ひとしきり泣いたあと、無理に笑顔を作って『困らせてごめんね』と言いながらバイバイする。 でも、今日はバイバイじゃない。 別々の場所に帰るんじゃない。 俺たちの、二人の居場所に帰るんだ。 電話で『おはよう』や『おやすみ』を言うこともない。 朝起きれば隣にいて、寝るときも隣にいる。 いつでも──。 俺たちの熱意に根負けした母親が、俺にかけた言葉は──『勝手にしなさい』だった。 それでも俺は涙が出るほど嬉しかった。    日南子の両親は、『もう絶対に帰ってくるな。おまえの帰る家はここじゃない』と言ったそうだ。 これからが二人の本当のスタートなのに、優しい言葉をかけられれば、ホッとして気が抜けてしまうことを親はちゃんと解っているんだろうと………これは日南子の言葉。  
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