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砂利敷きの駐車場は変わらず砂利のままだった。
見慣れた車の横には、杏子さんが立っていた。
笑顔で後方を指差す。
俺は、『ありがとうございます!』と頭を下げて走りだす。
うすずみ桜の下に、日南子がいた。
別れの日、泣いて抱き合った桜の下に。
俺に気づくと、日南子は左手で口元を押さえた。
その指には、指輪が光っている。
──泣き虫はきっとずっと変わらないんだろうな。
「待たせてごめん。
迎えに来たよ」
照れながら開いた腕の中に、日南子が飛び込んで来た。
桜の花びらが、日南子の髪にはらはらと舞い落ちる。
俺はその花びらを摘んで、日南子の手のひらに乗せた。
「一緒に帰ろう……」
「はい」
桜の花を背景に、日南子のとびきりの笑顔を──俺は胸の中に焼きつけた。
━終━
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