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「…行きます」
少女は両手を前にかざして、指で正三角形を作る
「ア・ウォ・レツェ・セベレス・カサルバフ・クフォイラン…」
紡がれる『魔言(まげん)』が注がれ、円の光はその強さを増す
少女は円の反応に満足しつつ、魔言を紡ぎ続ける
「グリカシナキア・タシハルウカミラ…」
少女は三角形を作る左手をくるり、と縦に回転して、今度は平行四辺形を作る
「……出でよ…異界より現れし、我が『同居者』よ!」
魔言を紡ぎ終えると、内側の円が飛沫を上げるように光を放つ
ある部屋のドアの前
マッセー・カルロは立っていた
礼儀正しい執事服に身を包み、腕時計を気にしながら、落ち着かない様子であちこちに視線を飛ばしていた
―――『魔言室』に入られてから五分…さすがに心配し過ぎか
ヴィハーデン家の屋敷の地下室
そこに魔言室はあった
魔言室とは、本来、強い毒性がある魔言を、特別な岩を使って造られた部屋である
魔言の毒に蝕まれた者は幻覚や幻聴などの症状を引き起こす
さらには、毒自体が『音』であるため、ほとんど指向性は無く、もし街中で魔言を紡ぐと、大惨事を引き起こすだろう
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