序章

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頬に何か冷たい物が落ちた感触がする。その感触で自分が寝ていたということに気がつく。見渡せばそこは靄がかかってわかりにくいが森だった。 おそらく今は早朝であるのだろうか、耳に入る音は風による木々のざわめきと自らのやや荒い呼吸の音だけである。この深い森の中で鳥の鳴き声が聞こえないのならまだ昼ではないのだろう。 耳を澄ましていたら静寂の中に誰かの話す声が聞こえた。そしてだんだん声が近づき、初めて木々以外の物が視界に入った。 黒い服を纏う金髪の少女、どちらかといえば森よりは城にいた方が似合いそうだと最初に思った。 その少女は手を差し出してきた。そこで座ったままだと気がつき、差し出された手を取ろうとした。 その時、少女の後ろに何か巨大な物があることに気がついた――
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