プロローグ

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2008年、八月三十一日、日曜日、晴れ。 全国的な夏休みが終わり未だ鳴き続ける蝉の音をイヤホンで遮断し、蒸し暑い炎天下の中自転車を漕ぐ学生が現れ始める。 顔は一様に暗くまるで世界の破滅に立ち会ったような顔であるがあながち間違いじゃない。 夏休みという自分の世界に閉じ籠り遊び惚ける確立した自由時間を壊されたのだ。 学生達の脳内では世界の崩壊に立ち会っているのとほぼ同義だ。 一様に学校がなんらかの自然災害で倒壊していないかと妄想するが、学校に着いてしまえばその短い妄想までも音を立てて崩壊する。 そんな学生に紛れて黒澤隼人(くろさわはやと)も自転車を漕いでいた。 久しぶりに着る夏服は全く肌に馴染まず、最悪な事に汗でベタつき不快感をより一層強くしている。 当たり前の事だが夏休みの時はルーズで涼しい衣服でクーラーの目が行き届いた快適な場所で過ごしていたのだから、そのギャップに体はなかなか慣れようとはしない。
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