プロローグ

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今漕いでいる自転車だっておよそ一ヶ月ぶりの運転でおぼつかない。 一ヶ月野放しになっていた自転車からは漕ぐ度に鳥の首を縛ったような音が鳴っている。 隼人は自宅から下り坂と登り坂の入り混じった厄介な通学路を突破し学校に登校した。 一ヶ月前と全く同じ景観で佇む校舎は憎たらしい程存在していた。 自転車置場からそう離れていない下駄箱で中履きに履き変えていると、 「よう黒澤」 浅羽鷹(あさばたか)だ。 「よう久しぶり」 「久しぶりだな。元気だった」 「まぁまぁだな」 威勢の良い浅羽はどうも夏休みの終わりを悲観していないように見える。 元々飄々たる性格の浅羽は何事も楽観的に取り組む為、夏休みの終わりも始まりも常に同じ表情だ。 それゆえかどうかは知らないが、顔も悪く無いため女性受けが良い。
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