5人が本棚に入れています
本棚に追加
見つめる我の瞳…
其れはしとやかな愁いを孕んで…。
桜の花弁がひらひらと舞い落ちる。
桜を見つめる夕霧。
手を伸ばせば掴める桜の花弁。
「夕霧…」
優しい声に夕霧が振り向けばそこには桜鬼がいた。
桜鬼は夕霧の許婚である。
元々両親が決めた政略結婚であったが、互いの姿を見た瞬間惹かれ合った。
俗に言う一目惚れ。
夕霧は桜鬼の方を見て微笑した。
「如何なさいました?桜鬼殿」
「今年は特に桜が綺麗だ…。其方と一緒に桜が見たい」
桜鬼は夕霧と目を合わせずに微かに頬を染めて言った。
「いいですね…。では身支度をして参ります、下で待っていて下さい」
桜鬼は頷くと、踵を返して夕霧の部屋から去った。
二人が愛し合っていなければ…あんな悲劇は訪れなかったのに…。
「(だってしょうがないじゃない…愛してしまったんだもの…)」
最初のコメントを投稿しよう!