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【雨の待ち人】
雨が静かに俺を濡らせていく。
もう18時を回ってしまった。いきなり押し付けられた仕事のせいで、帰るのが遅くなっちまったな。
しかも、雨ときた。まさに祟り目に弱り目ってとこだな……。
そんな事をぼやきながら駅前の広場を歩いている時、ふと中央にある時計に目をやった。
始めは見間違いかと思ったが、確かにそこには彼女の姿がある。俺は驚きのあまり声が出せずに視線を泳がせる。
そんな俺に気付いたのか、彼女は優しく微笑みながら「お帰りなさい」と言ってくれる。
何だかその笑顔を見ると、気恥ずかしいくなり、それを悟られぬよう笑顔で「ただいま」と返した。
それにしても、何で雨の中こんな所に?
そう思った俺は「今日はどうした?」と彼女に聞いてみる。
彼女は途端にそっぽを向いてしまい、拗ねてしまう。
俺は慌てて謝る。その時、彼女の肩が濡れているのを見て、心配して迎えに来てくれたんだと思った。
「あのね……」
彼女が俺に耳打ちした事は、嬉しい報告。たまらず俺は彼女を抱き寄せた。
なぁ、ずっと傍に居てくれないか?
ずっと、君を愛し続けるから。
~雨の待ち人~
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