~入場口にて~

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高校三年の夏。 言い換えれば高校最後の夏。 べつの意味で18歳の夏。 人によっては17歳の夏。 そんな季節にただビデオを見るだけの授業なんてやってられっかーーー!!!! 受験なんて知るかーーー!!!! (そんなんだから落ちるんだよ。) と、いうことで俺は某県にあるウォーターアミューズメントパークの入場口前に立っている。 今は一人だがロンリープールというのはなかなかに痛々しいので待ち合わせをしている。 太陽は気が早いもので早朝出勤して、くそ暑い陽射しを照らしてくれやがりながらも少しづつ移動しているので後時計二回りぐらいで頭のてっぺんにきそうだ。 俺が腕時計で時間を確認するために下を向いた ちょうどその時、 「地面を凝視して相変わらず蟻の行列の観察をしてるのね。」 横からよく知った声がした。 久々に聞くその声に少しだけ胸を踊らせると同時に全く代わらない口ぶりに若干呆れながら振り向くと案の定、俺の彼女が立っていた。 綺麗な黒髪肩まで伸ばして、まるで暑さなど感じてないように凛として立っている。 半月ぶりに会う彼女は俺を見て残念そうに呟いた。 「あ、ごめんなさい。犬間違いでした。」 「せめて人と間違えて!」 「迷い犬かしら?ふふふ、思わず触りたくなくなるぐらい可愛くない犬ね。」 「微笑えましそうにしても侮辱してるのはガンガン伝わってるからな!」 「でもきっと飼い主は美人でスタイルよくて頭もいい完璧人間だわ。」 「それ自分のこと言ってんのか!?自分のこと褒めちぎってんのか!!」 「あら……よく見たらうちの犬じゃない。」 「彼氏だ!!」 「まったく紛らわし顔ね。」 「それは他人と紛らわしのか、犬と紛らわしいのかで俺の今後の付き合いが変わるからな!!」 「どう変わるの?」 「前者ならにこやかに関係続行だ!後者ならソッコー縁を切る!!」 「あなたの顔、犬によく似てるわね。」 「チクショー!!」
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