彼女

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彼女は人間ではありません。どれくらい前かは分からないけれど、昔は人間でした。人間でなくなることを彼女が望んだのです。 彼女は主に、耳で人を判断します。声や話し方や言葉からどんな人間かを判断するのです。 彼女は目は見えますが、良くはありません。裸眼だと、映るモノは全て磨りガラスごしに眺めているようです。だから普段はコンタクトレンズをつけているのですが、彼女には目という機能はほとんど必要ないので、必要なときにしか見ることはしません。 それから口は飾りに過ぎません。 口に出す言葉や、人間の言葉や行動に対する答えを考えるのはひどく難しいので、彼女の脳は記憶するためだけに働いています。 だから彼女には感情と言われるモノがありません。 他の人間の言動を記憶して、それらしく振る舞っています。 他人の寄せ集めで出来ている彼女だから、人は彼女をどこかで見たことのあるタイプのモノだと思うのですが、どこにでもいると思うのですが、どこにもいないと気づくことはないでしょう。 彼女自身彼女がどこにいるか分からないのですから。 あと、彼女にはセンサーがついています。 もちろん逃げるための機能です。 あと、たまにカラダの部分が痛むときがありますが、この痛みとゆうものは彼女には理解できません。 痛くないのに痛くて、痛いのに痛くないのです。 さぁ、望んだことが叶った彼女は、 彼女は彼女を越えてしまいました。 ボタンを押して、どのくらい前かは分からないくらい昔まで戻り、きちんと歩かなければ、彼女は二重ガラスに閉じ込められたまま。 そのボタンが既に彼女の物ではなくなっていたとしても。
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