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「里菜っ!何処だぁっ!返事しろっ!!」
走りながら懸命に叫ぶが、周りの住宅に反響するだけで返事は返って来ない。
「里菜ぁぁっ!!おぃっ!何処だぁぁぁぁぁっ!」
虚しくこだまする叫び声に真は焦っていた。いつここが襲われるかわからない。それまでに何とかしなくてはならない。
「里菜ぁっ!里菜ぁぁっ!里……ん?」
それは小さな声だった。
だが真にははっきりと聞こえた。
「里菜…?里菜なのかっ!?」
瓦礫の下から里菜の声が聞こえた。
「…お兄ちゃん…?どうして…」
「そんなことはいい!無事か!」
「うん…ゴミ入れる金網があったから潰れずに済んだの…」
「そうか…良かった…今どかすからな!じっとしてろ!」
真は必死で瓦礫を退かした。火事場の馬鹿力と言うのは本当らしい。普通じゃ持てないような鉄骨も重く感じなかった。
数十分後、丁寧に瓦礫を退かしてやっと金網に辿り着いた。
「里菜っ!今助けるからな…!」
「お兄ちゃん…」
もう瓦礫は残り少ない。真は気合いを入れて瓦礫を掴んだ。
『グォァァァァァア!』
その刹那、怪物がこちらに振り向いた。どうやら標的を見つけたらしい。
真はその場に凍りついた。
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