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夜の闇に溶け込む漆黒のボディに鋭く輝く赤色の瞳…それは人型の巨大なロボットであった。
「お遊びはそこまでよ、『坊や』…」
機体のスピーカーから声が響く。どうやら搭乗者は女性らしい。しかし、どこか男じみた雰囲気を醸し出す声だ。
『ガァァァァァア!!』
怒り心頭の怪物は口から血の混ざった液体を巻き散らしながら突進してくる。しかし彼女は全く慌てなかった。
「…ご免なさいね」
怪物が目の前で爪を振りかざそうとした刹那―
怪物は縦に真っ二つに切断されていた。
機体の右手にはいつの間にか真紅のサーベルが逆手に握られている。
「馬鹿正直な奴は嫌いなの…」
悲鳴をあげる間も無く怪物は絶命し、青白い炎に包まれて消えた。
すると機体のメインディスプレイから電子音が鳴った。通信のようだ。
『鏡子、幻獣(ビースト)昇華確認。帰還してくれ』
帰還命令だ。これで今日の任務は終りだ。夜明けは近い。
「了解、帰還する」
どこか眠たそうに返事をしながら、鏡子はスラスターのエンジンを噴かせた。
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