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真っ暗な闇の中、その男は静かに微笑んだ。
* * *
長かった委員会活動も終わり、俺が疲れきって家へ帰ったのは午後七時を少し廻った頃だった。
家の中は暗くしんと静まり帰っている。
こんな時間に帰って来たらいつもなら母さんが心配そうに駆け寄って来る所なのだが、今日に限ってそれがなかった。
少し不信感を覚えながらも、リビングの明かりをつけると、出窓の外にあるテラスの椅子に腰をかけている見知った人影が姿を現した。
切れ長の瞳で今の季節まだ蕾だらけの桜を眺めている揺華(ヨウカ)。
その絵画の様な出で立ちを見ると、本当に自分達が双子なのかと疑問を抱きたくなってくる。
二卵性と言うことで見た目や雰囲気は全く違うのは理解しているが、そのせいか俺は揺華の様に細い瞳やスラリと伸びた鼻筋、大人っぽい雰囲気などは一切持ち合わせていない。
どちらかと言うと瞳は少しつり目だが大きめだし、鼻なども決して高いとは言えない、ごくごく普通の高校生といった顔立ちだ。
多分母さんのお腹の中で良いところを全て揺華に取られたのだ。
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