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小さな頃から伸ばしていた腰まである長い髪も含めると、俺はまさに揺華とは正反対だ。
いつ考えてもため息を付きたくなる。
しかし、揺華に似ていると言われるのもそれはそれで嫌なので、これで良かったと思うことにしている。
そんな時、俺の視線に気付いたのか、揺華がチラリとこちらに視線を向けて来た。
伏し目がちな瞳は相変わらず色気がだだもれだ。
しかし、揺華は特に口を開く事もなく、直ぐにまた桜を愛ではじめてしまった。
俺も特に話などする気も無かったので、そんな揺華は気にせず、部屋へと向かおとしたのだが、俺は思い出してふと足を止めた。
「母さんは?」
振り返って声をかけると、揺華は今思い出したとでも言うような顔をした。
「あぁ、そういえば俺が帰って来た時からいなかったな」
「そか。てか、何飲んでるんだよ…?」
先程からずっと持っていたグラスの中身に、苦笑して歩み寄ると揺華はニヤリと笑みを浮かべながら、ゆっくりと強い香りのするソレを俺の方へと近づけてきた。
「やっぱ酒か…」
「夕飯もまだなのに」とため息をついた俺に揺華は持っていたグラスを差し出してきた。
「睦月(ムツキ)も飲むか?」
俺が酒が苦手な事を知っていてこういう嫌味を言ってくるんだから悪趣味だ。
無言で睨んでいると、揺華はすぐに皮肉気な笑みを浮かべて鼻で笑ってきた。
「なんだ、いけないのか?」
「別にそんなこと言ってないだろ」
実際問題、高校生で酒はいけないのだが、今の時代そんなことを気にする者はあまり多くはないだろう。
現に俺も幾度か友人につき合って飲んでみた事はあった。
だが、何故か俺は酒に弱いらしく、あまり強い酒でもないのにいつも一杯目で頭痛が始まってしまい、その場でリタイアなのだ。
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