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わたしの人生を大きく変えた1日があるとすれば、それはいつだろうか。
とにかく毎日がつまらなく感じていて、友情も愛情も笑えるくらいに幼稚なものだと思っていたわたしは、学校では特に誰とも関わらないように振る舞っていた。
「美樹、これからどうするの?」
授業の後のショートホームルームが終わったところで、荷物をまとめながらわたしを呼び止めたのは、同じクラスの真奈美という女子生徒だ。
「どうって?」
「どうって? じゃなくて! 何か用事あるか聞いてんの!」
真奈美は、もーっと膨れながらわたしを見ている。
「用事っていうか…うん、まあ一応」
「なに、男?」
「うーん……」
深く追求されたくないので、適当な返事で流した。
この真奈美というのが随分と変わった子で、クラスに馴染まず浮いているわたしに、しつこく絡んでくる。
悪い子ではないと思うのだが、正直クラスメートと戯れる暇があるなら、男を捕まえて遊んだほうがマシだ。
「もー! 友達がさ、美樹と遊びたいって言ってたんだよー?」
「へえ」
「隣のクラスの笹山って奴。知ってる?」
「知らない。高校生には興味ない」
「美樹だって高校生じゃん!」
言われて、帰り支度をしていた手が一瞬止まった。
確かに。
でも、同じ年齢の男の子になんて、とても興味が湧かない。
「同じ学校だと、何かと面倒じゃん」
「そういうもの、なの?」
「じゃあ、わたしそろそろ行くから」
真奈美との話を無理やり終わらせると、わたしは教室を出る。
「あーもう! 下まで一緒に行く!」
その後ろを、飽きもせずに真奈美が追ってくる。
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