PUZZLE-美樹-

わたしの日常

「それでさ――」

隣を付いてくる真奈美と笹山が楽しそうに話しているのを聞き流しながら、たしは歩く速度をあげた。

もうだいぶ待たせている。

怒っていないといいけどなあ。

校門の近くまで来ると、白い車が校門の真ん前に停まっているのが見えた。

「じゃ、わたしはここで」

「うんっ、美樹またねー！」

その場で真奈美に別れを告げ、笹山には会釈をすると、その白い車に駆け寄った。

「ごめんね、待たせちゃって」

運転席の窓から顔を出している男、圭介にそう言う。

「俺が誘ったんだから、そういうことは気にしないの」

少しだけ眠たそうな顔をした圭介は、窓からわたしの全身をじっと眺めて、フッと小さく笑った。

「新鮮だな」

「急にどうしたの？」

尋ねても圭介は答えない。返事の代わりにわたしの手を掴み、男にしては細い指で手の甲を撫でた。

「くすぐったい」

「ごめん。触りたくなった」

直球を投げてくる圭介に小さく微笑むと、指がするりと離れて、助手席のシートをとんとんと叩いた。

「乗って」

頷いて車に乗り込む。その一瞬、真奈美と笹山がこちらを見ていることに気が付いたけれど、気づかなかったふりをした。