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彼女は体のあちこちに触れその感覚の正体を探ろうと試みる。
そして次第にその感覚が何か理解できてきた。
――魂と身体が切り離された。
「あ……」
無意識のうちに声が出て、ほんの一筋であるが彼女の頬を涙が伝った。
「あなたは誰? 」
どうしようもない喪失感を少しでもごまかそうと、目を閉じ首を左右に振りつつ目の前の男に尋ねる。
「君は分かっているはずだ」
男は鎌を持っていない方の手で何かを掬い、視えない何かを確認しつつただただ平坦に呟く。
彼女の方は静かに目を開きこくりと頷く。
「ええ……死神でしょう」
死神――
命を刈り取り神の元へ運ぶ忌むべき神。
黒衣に身を包み、大鎌を振るう。
「現実に存在していたなんて……」
彼女は思わず呟き、慌てて手の平で口を塞ぐ。
しかし、男、死神は別にどうと言うことのないようで肩に鎌を担ぎ彼女に手を差し出した。
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