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「行こうか」
則ち、あの世と呼ばれるところへと。
彼女は一旦彼の手をとろうとするがピタリと手を停め胸の前で握り締め、うつむいた。
「どうした」
死神は訝しげに彼女を見つめる。
彼女は迷い左右に目を泳がせたが決心たようで口を開く。
「……この世にとどまっちゃ駄目? 」
「駄目だ」
即答して死神はやや表情を険しくして手を強く差し出す。
彼女はぼんやりとした目でじっと死神を見つめるだけでその手を握ろうとはしない。
だが、死神の方は決して無理に握ったりはせずに彼女が握るのをただ待っていた。
「……折角外にでられたのに……外の世界を見て回れるのに」
視線を逸らし沈んだ様子の彼女に、彼は肩をすくめその生気のない顔をわずかに歪める。
心底理解できないといった様子だ。
「……何故そこまで外の世界にこだわる」
その言葉にぴくり、と彼女は肩を震わせ、そしてゆっくりと視線をあげ死神を見つめた。
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