死神は六花に唄う

死の追憶

少女は嘆息する。

いつかはこの時が来るのは分かっていた、むしろどこかで願ってすらいた。

「なら何故こんなに悲しいの」

声を絞り出すように自問する。

そう、本心はやはり死にたくはなかったのだ。

生きるという可能性が潰えたこの瞬間、そのことを痛いほど実感した。

「……死にたくない」

心に秘めた感情が堰を切ったように溢れだし、彼女は幻影の様な涙を流し嗚咽を溢し続けた。

不意に彼女は嗚咽を溢しつつ顔を上げる。

視線の先にはいまだ泣き続ける両親。

しかし、その表情は先程とは僅かに変化していた。

ほんの、ほんの僅かではあるが彼女は彼らの顔に安堵の色を見た。

「そっか。そうだよね」

嗚咽が自然と止み、あれほど流れていた涙か止まる。
その代りに顔に貼り付いたのは自嘲の笑み。

自分のことしか考えていなかった。

両親は無意識ではあるが私を疎ましく思っていたのだろう。

当然だ、こんな自分のことなど疎ましいに決まっている

そう思うと心残りは山のようにあれど不思議と死を受け入れることが出来た。

「さようなら」

最後に微笑みかけ、踵を返し、浮遊しつつ窓の外に向かう。

あれほど病室と外を隔てていた窓ガラスをあっさりとすり抜け彼女は雪降る外の世界に出ていった。