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「……それで、わざわざ私の所にやってきたという訳か」
俺に珈琲を差し出した女性は、まず間違いなく歓迎の意は汲み取れない口調でそう言った。
「そういう事です。出来るだけローリスク且つハイリターンな仕事、転がってませんか?」
出された珈琲を啜り、尋ねる。
「此処を何だと思っている……と、言いたい所だがな」
ソファーに足を組み、大きく溜め息をつく。
「お前の様な奴が増えているのが現実でな。最近では、人生相談からゴキブリ退治の依頼まで来る有様だ」
がっくりと頭を垂らして、愚痴をこぼした。
この人は、いつも依頼を提供してもらっている、俺達の生命線となる人である。
名前は神原有須(カンバラ アリス)
一挙手一投足が目を奪われるほどの美人なのだが、男勝りなのが玉にキズ。
典型的な仕事人間であるのと上記の性格が災いして、二十ウン才で未だ独身。彼氏非募集中。
今までの会話から分かる様に、彼女は国家権力に遣える正義の人であった。
「おかげで特別相談課に人員が割かれる始末だ。というわけでコウヤ、私は公務で忙しいからさっさと帰れ」
シルクのような美しい銀髪を、掻き上げあしらうアリスさん。
ちなみに、アリスさんというのは心の中の愛称である。
「いや、神原さん。俺が来た時思いっきり暇なオーラ出して、煙草吸いながら椅子にふんぞり返ってたじゃないですか」
実際に言うと、あからさまに不機嫌な顔をするので、呼ぶ時はきちんと名字で言わなければならない。
ましてや、ちゃん付けで呼ぼうものなら、特殊武装が火を吹きかねないので注意するように。
経験者は語る。
「私達が何もすることが無いのは平和な証拠だ。喜ばしいことじゃないか」
矛盾した発言を堂々とするアリスさん。
色々な意味で恐ろしい。
「どうしても駄目ですか?金になる仕事はマジで欲しいんですけど……」
だが、こちらも引き下がる訳にはいかない。
我が事務所での面子の為に、俺は果敢にも、この鉄人に単独で立ち向かう!!
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