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雨の降る音がした。
「……し」
規則正しくリズムを刻む雨の音は、眠りを助長する音源としては十分過ぎる程である。
「………さ~い」
時折聞こえる女の声も、一定の調子の中にアクセントを加え、いい感じでレム睡眠の波が再びやってきた。
「起きろ~所長!こんな可愛い女性が起こしに来ているのに、寝ていて職務怠慢とはいい度胸だな、コラァ!!」
ぼんやりと小さな物体が、ピョコピョコと擬音を出して暴れていた気がするが、携帯のアラームが鳴っていないので、構わず心を無にした。
「…………」
静かになる室内。
時折、椅子を動かし、積み上げる様な音が聞こえるが、気にしたら負けの範疇である。
「……所長起こし、女子、飛び込み。鷹見結衣、JAPAN」
さっきまで見ていた、テニスの選手になって、熱い男を翻弄し続けるという面白い夢の続きを見ようと、イメージを鮮明に思いおこす。
「……はぁ!!」
そうそう、綺麗な放物線を描きながらこちらに向かってくる物体を、見事にスマッシュしようとして、
「……おっはようございま~す所長!!!!」
「ぎゃああぁあ!!!?」
俺――真白紅夜は、朝から見事にスマッシュされるハメになるのだった。
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