【絶望×狂気=演技】

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こうして、騒がしい朝となったが、やっと我が事務所の就業時間が始まりである。 雨の音混じりに、キーボードを打ち込む音が聞こえてくる。 やっぱ、働くってのはこういう状況だろう。 「…………」 無言で真面目に事務作業に取り組むのは、先程の黒髪の彼女。 名は常磐瑠璃花(トキワ ルリカ)。 腰まで届く美しい黒髪に、仕事中に着ける眼鏡が良く似合う、19歳の青春真っ盛りな大学生。 真面目を体現した様な性格の彼女は、事務所内で一番の働き者である。 彼女がいなければ、一体ここはどれほどカオスな事態になっていただろうか。 その感謝の意を、給料で示してあげたいところなのだが。 生憎、事務所の経済状況では、一部上場企業に遠く及ばないのが現実。 ほら、最近不況だし。 就業理由は、事務所の雰囲気が気に入って、とか何とか。 ある意味変わった女の子なのかもしれない。 「どうしましたか、所長?」 件の瑠璃花ちゃんが尋ねる。 「ん?ああ、悪い悪い、何でもないよ」 無意識に視線を彼女の方に向けていたようだ。 「はぁ……そうですか」 軽く首を傾げ、腑に落ちない表情を浮かべていたが、再び作業に戻る瑠璃花ちゃん。 おお、ブラインドタッチ。 本当に優秀な部下である。
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