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「で、結局謎は解けずに深まった訳か。」
「……まじで深まったな」
授業中の屋上で、俺は昴に昨日の事を話していた。
咲弥がどんな人物なのか、昴も気になっているようだ。
チャララ~♪
どこかで携帯の着信音が鳴った。
遠くではない。
「他にも誰かいるみたいだな」
「ほっとけばいいさ」
と、俺が言い終わる前に昴は音のした方に向かっていた。
本当に行動力だけは飛び抜けている。
「あ~!!さくやっち!!何してんの?」
さくやっちって…。
なにこの展開。
俺のクラスって、新学期早々3人もサボってんのか。
もう、冷静に突っ込むしかなかった。
「またあんたたちか…」
咲弥が言った。
うんざりしたような口調だが、悪意は感じられなかった。
そして、彼女の横にはスケッチブック。
まだ描きかけだが、屋上からの景色を描いていたらしい。
やっぱりあの時の彼女は咲弥だったんだ。
(ってまだ双子説信じてたのか俺)
「さくやっちすげー絵がうまいね!!美術部入んの?」
「まさか!帰宅部だよ。バイトしたいし」
「もったいねーなぁ」
「絵はいつでも描けるからね」
2人の会話についていけない俺は2人の会話を黙って聞くしかなかった。
「矢野君てさ、クラークって呼ばれてるの?」
「え?」
いきなりの咲弥の問いに、俺は反応できなかった。
「そうそう!俺がつけたの!!」
「下の名前がケントだから?」
「そう!クラークケント!!スーパーマンの!!」
昴と咲弥の笑い声が授業中の屋上に響いた。
人のあだ名で爆笑しやがって…。
「ケントって漢字珍しくない?」
「あ?そうかな?絢斗って書くけど。」
「意味は?」
「意味はよく知らね~な。そういえば」
咲弥と珍しく会話になった。
「さくやっちは?どんな字書くの?」
昴の問いに俺は答えられたが、さくやの答えを待った。
「咲くに弥生の弥。桜の精霊の木之花咲耶姫からきてるんだって。」
コノハナサクヤヒメ
桜の精霊…
『さくや、名前負けしてないな。』俺は素直にそう思った。
「あぁ、古事記に出てくるアレね」
…って何?昴知ってるの?
こういう話についていけちゃうわけ?
昴の守備範囲の広さにはいつも驚かされる。
頑張れ、俺。
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