新生活

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「おはよークラーク!!昨日俺がいなくて寂しくなかった?」 朝、教室に入るとすぐに昴が駆け寄ってきた。 「全然」 咲弥と2人で帰れてむしろラッキーだったし。 なんてことはコイツには言わない。 ウルサいだろうから。 昨日はあれからも、まぁまぁ会話が続いた。 チェロの話や絵の話。 昨日の咲弥は、あの桜並木道の時と同じで優しい雰囲気だった。 あ、あの時何故『さくら』と名乗ったのか、聞くのを忘れていた。 でもまぁ、元々俺の聞き間違いかもしれないし、急ぐことでもないか。 昨日も咲弥は、兄貴の話になると頬を赤く染め、焦っていた。 その事を思い出すと、テンションが下がる俺。 女々しい。 「矢野君、ちょっといいかな?」 声の方には同じ中学出身の女子がいた。 名前は…なんだっけ。 「俺?」 俺は同中女子の方へ向かった。 「ひゅーひゅう」 昴が茶化す。 クラスのやつらの視線が集まるのがわかる。 なんなんだこのシチュエーションは。 「何か用?」 「これ」 同中の女子が一通の手紙を差し出した。 「あの子から」 同中女子が指差す方には1人の女子がいた。 こっちを見て赤くなっている。 背が低く可愛らしい感じで、咲弥とは全く違うタイプだ。 俺は、手紙を受け取った。  
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