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ガチャ
バタン
「おかえりぃ~」
上機嫌の兄貴の声に、俺は鳥肌がたった。
「な、なんだよ。今日早いじゃん」
「うん、ちょっとね♪」
大学に入ってからの兄貴は新歓だかなんだか知らないが、飲み会続きで夜は家を空けてばかりだった。
「咲弥ちゃんと同じクラスなんだって~?」
「……。なんだ知ってんの?」
咲弥とは昨日兄貴の話をしたばっかりだった。
昨日の咲弥の反応を思い出して
自分が苛立っているのがわかった。
「あんまり仲良くするなよ~俺のお気に入りなんだから♪」
なんでそんな事俺に言うんだよ。
咲弥の気持ち、兄貴は知ってるのか?
知っててそんな事言ってんのか?
気に入ってるなら、
さっさと付き合うなりなんなりすればいいんだよ。
いや、それはそれでムカつく。
そんなの嫌だ。
じゃあどうしたらいいんだよ。
どうしたら俺のこの苛立ちはおさまるんだよ。
「じゃ、俺チェロの散歩行ってくるわ♪」
全てを見透かすような
飄々とした兄貴の態度に
俺はいつになく苛ついていた。
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