はじまり

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春休み。 高校の入学式まであと一週間。 制服の採寸や、入学説明会… その他諸々の用事も落ち着いた頃だった。 天気の良い昼下がり、俺は愛犬チェロの散歩に出かけた。 チェロはゴールデンレトリバー。大型犬だ。散歩が嬉しいのか、ふさふさの太い尻尾をブンブン振っている。 犬は素直で分かりやすい…。 チェロの散歩は久しぶりだ。 一応、ついこの間までは受験生。日々が時間に追われていた。 …と、言ってはみたが、普段チェロを散歩に連れて行く兄貴は3つ年上。兄貴も大学受験を控えた受験生だったんで受験は言い訳にはならない。 俺も兄貴も無事に第一志望に合格して、この春からお互い新生活が始まる。 春の陽気のせいか 俺の足取りは軽かった。 いつもの散歩コースには、昔よく遊んだ公園と桜並木道がある。 桜並木道は桜が満開で、今年も圧巻だった。 『久しぶりだな…』思わずそう呟いた。 今年もここの桜を見れてよかった。 いつか大人になってこの町を出たら、もうこの桜は見れなくなるんだ。 まぁ、ずっとこの町にいる可能性もあるか。 将来どうなってるかなんてまだわからない。 自分がなにをしたいのかも…。 とりあえず理数系ができたから、高校も理数科があるところを受けた。 親は俺以上に喜んでいた。 まぁ、中学で迷惑かけた分、これからはちょっとでも親孝行していかなくちゃな。 桜並木道のベンチに座って、俺はそんな事を考えていた。 「ワン!!」 「あ、チェロ~!!!」 チェロが俺の側から離れ、嬉しそうに駆けだした。 その先に、君はいた。  
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