それぞれの春

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いつものチェロの散歩。 桜並木道の桜もいつの間にか満開だ。 俺は大学の合格発表も終わって、気楽な春休み。 他の友達と違って大学は実家通いだから引越しもなく、友達の見送りも終わって、普段は趣味の株をやるくらいだ。 大学は無事に第一志望に合格。要領の良さは親に感謝だ。 「ワン!!!」 いつもの場所で、チェロが俺の元から走り出した。 「こんにちは、咲弥ちゃん」 「チェロ~♪ヨシ君、こんにちは!」 咲弥ちゃんはチェロをハグしながら言った。 相変わらず、チェロが一番、俺は二番。 本当に犬が好きなんだな。 去年の夏くらいからか、ここでよく会う咲弥ちゃん。いつもここで絵を描いている。 年は俺の弟と同じで、この春から高校生。咲弥ちゃんが嬉しそうに高校に合格したと言っていたのは、ついこの間のことだ。 咲弥ちゃんは、仕草も大人っぽくて綺麗で、隣を歩かせても恥ずかしくない。いつ見ても15には見えない色気がある。 食べちゃいたいくらいだ、なんてね。 咲弥ちゃんとは、会うたびに色々話をした。 なんと、帰国子女で去年の9月に日本に帰ってきたらしい。まぁコレを聞いて色々と納得したもんだ。 で、こっちの中学には馴染めず、登校拒否。 多分、帰国子女ってことはこれから公にせず過ごすだろうな。 高校はちゃんと通って、信頼できる友達も作って欲しいなと、お兄さんは思っている次第です。 ある日、珍しく絢斗が俺を訪ねて部屋に来た。 あいつが俺を頼るなんてよっぽどのことだ。プライド高いからね、あいつは。 でも、プライド高い割りには素直だし、まだまだかわいい弟だ。 なんでも、咲弥ちゃんの事が知りたいらしい。 そういえば、さっき咲弥ちゃんから絢斗と同じクラスだったってメールがきてたな。 早速学校で絡んだのか?何かあったのか? 俺も気になるところだが、それは咲弥ちゃんに聞けばいい。 弟よ、俺を直々に尋ねてくるなんて100年早いぞ。 俺の一言にフルに反応しちゃって。本当に、まだまだかわいいヤツだ。 可愛い子には旅をさせろ…ってよく言うもんな。 お兄さんは旅をさせよう。 そういうわけで。ごめんね、絢斗、咲弥ちゃん♪  
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