6人が本棚に入れています
本棚に追加
この桜並木道は、私が好きな場所。
おばあちゃんから、私の名前はこの桜に因んでいるとよく聞かされていた。
この桜並木道の桜が、実際に日本に帰ってきて見る初めての桜だった。
こんなに綺麗だなんて、想像以上だった。
花が満開になってから葉が出るというのも、他の花とは違って気に入っている。
私はここに来るたび、桜を何十枚もスケッチブックに描いた。
ここではよくヨシ君に会う。ヨシ君は3つ年上のお兄さん。本名は『矢野芳之[ヤノヨシノ]』。
私の悩みを笑顔で聞いてくれた人。ヨシ君の包み込むような笑顔を見ていると、全部吐き出しちゃう私。
あの笑顔はずるいと思う。
きっと、これからもあの笑顔の虜になる人は山ほどいると思う。
緊張した高校生活初日。
中学の教訓で、穏やかにひっそりと高校生活を送ろうと思っていた矢先に、まさか、あんなに目立っている二人に話しかけられるなんて。
思わずきつい言葉が出てしまった私。
でも、周りを見たらあたしの容姿は普通に目立ってるし、今思うと怒り損だった。
峰倉君と矢野君。
高校に入って、あたしと普通に話してくれる二人。
中学の時はこんなことなかったから嬉しかった。
峰倉君は、明るくて、友達も多くて、いつもクラスの中心。もてそうなのに、いつも矢野君と一緒にいる。担任に指名されたクラス委員も二つ返事で快く引き受けちゃうし。こっちでは珍しいタイプなんじゃないかな。
矢野君は、さすがヨシ君の弟だなと思うほどの存在感。ルックスもいいし、みんなが近寄りがたいって言うの、なんか分かる気がする。でも話してみると、意外と天然で、優しいしびっくり。
前途多難な高校生活だと思ったけど、二人のおかげで楽しくなりそうな予感。
日本に帰ってきて良かった。
最初のコメントを投稿しよう!