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チェロは桜並木道を歩く1人の女性に駆け寄った。
背は俺より少し低いくらいか、同じくらい。七分袖の白いシャツにショートパンツを着ていて、スラリと伸びた足が際立っていた。肩甲骨まである茶色の髪の毛は春の陽を浴びてキラキラ輝いている。
「チェロ~今日も元気だね~!!」
彼女はそう言って屈むとチェロを優しく撫でていた。
チェロも嬉しそうに尻尾を振っている。
チェロが喜んで彼女に抱きつくと、彼女の茶色い髪がさらさら揺れた。
彼女の髪は綺麗なストレートで、シャンプーのCMに出てきそうな位艶やかだ。
近くで見ると、肌は白くて、唇はほのかにピンクで『あぁ、桜の花びらみたいだな…。』なんて思った。
俺はしばらく彼女から目が離せなかった。
「あ、えっと…はじめまして。今日はヨシ君じゃないんですね」
チェロとしばらくじゃれあった後、彼女の方から俺に話かけてきた。
目が合うと、反射的に俺は目をそらした。
「え?あぁ、兄貴の知り合いなんですか?」
「え!?違います違います!!知り合いとかそんなんじゃないんですけど、えっと、ここでチェロの散歩の時よく会うから…」
そう言いながら彼女は顔がほんのり赤くなっていた。
……兄貴のことが好きなのか。
俺ってば今惚れそうだったし。
危ない危ない。
しかし兄貴、相変わらずのモテ様だ。
「今日は兄貴、大学の入学式なんすよ。」
そんな感じで俺は、ささやかながら兄貴情報を提供してあげた。
彼女も嬉しそうに俺の話を聞いていた。
彼女の髪の毛を耳にかける仕草や、耳に開いたピアスが色っぽくて、15の俺には刺激的だった。
そんな彼女と一緒に時間を過ごせるなんて、俺はラッキーだと思った。
俺の方が年下のはずなのに、彼女は全く俺の事を年下扱いしなかった。
俺はとても居心地が良かった。
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