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俺と彼女は桜並木道のベンチに座って、しばらく話をしたり、チェロと遊んだりして過ごした。
「よくここに来るんですか?」
「はい。私、絵を描くのが好きで…」
そう言って、彼女はバッグから落書き帳を取り出した。
そこには、この桜並木道の桜のデッサンがあった。
彼女のスケッチはリアルで、絵の中の桜並木が風に揺れて、今にも動き出しそうだ。
他にチェロのデッサンや、兄貴のデッサンもあった。
この場所でよく絵を描いているのか、公園で遊ぶ子供の絵や、公園から見える景色が何十枚と描かれていた。
絵を描くなんて、正直意外だったが、俺は感心しながら彼女のデッサンの数々を眺めていた。
「あ、あたしそろそろ…。」
彼女は立ち上がった。
「今日は楽しいお話、ありがとう」
そう俺に告げると、チェロとハグをして彼女は歩きだした。
「あの……!!名前!!」
俺はとっさに出てきた言葉を彼女に向かって投げかけた。
彼女は立ち止まって振り返ると、こう言った。
「さくら、です」
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