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「あぁ咲弥ちゃん?知ってるけど?」
兄貴の口から『さくや』という名前が出た時点で、
俺が一番信じたかった双子説は打ち砕かれた。(夢見すぎ)
兄貴の部屋。
机、本棚、ベッド、床にはラグマット、机の上にはノートパソコンが広げてある。
至ってシンプルだが家具や小物のひとつひとつにセンスが見られる。
いつもの香が焚かれていて、完全にここは兄貴のテリトリーだ。
パジャマ姿にメガネをかけ、椅子に腰掛け机に頬杖をついて、兄貴はこちらを見据えていた。
俺は、とてもじゃないが、兄貴から真実を聞き出せる気がしなかった。
「その、さくやちゃんてさ…どんな子?兄貴から見て…」
「……お前なんでそんなこと聞くの?」
ニヤニヤして俺を見ながら兄貴が言った。
やはり兄貴。
そう簡単に口を割らない。
15年の付き合いだが掴めない性格だ。
「お前はどーなの?」
逆に兄貴に聞かれ、俺は戸惑った。
「お…俺は…」
さくやのことが気になってるのは事実だ。
でも
さくやは兄貴の事が好きなんだよ。
そう思うと俺は何も言えなかった。
「なにがあったかは知らないけどさ」
兄貴が俺に近づいて耳元で言った。
「俺は好きだよ、ああいう子」
それが何を意味するのか
簡単には自分の考えを言わない兄貴が、何を思ってそう言ったのか。
俺には理解できなかった。
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