第1章 恐るべし義母

2/5
3279人が本棚に入れています
本棚に追加
/1140ページ
  【結婚したら子供はすぐ出来る】 それは、昔の人の古臭い固定観念だ。 さっそく本題に入るが。 私と旦那は、出会って7年で結婚した。 恋愛時代はそれなりに楽しかったが、結婚生活は旦那の両親との同居でスタート。 料理の腕や掃除っぷり。 互いが腹の探り合いを繰り広げる日々がしばらく続き、ある時ふと気が付いた。 毎日毎日、義母はトイレの汚物入れを観察している様子があることに。 彼女には既に用無しの、この汚物入れを使用するのは私ただ1人。 これにナイロン袋が掛かっていると、彼女は決まって溜め息混じりにこう漏らした。 「はあー……、まーたダメやったんかい……」 これはキツ~イ一言だ。 大好物の『パイの実』をむさぼる右手が止まってしまうほど、ショックな一言だ。 私だって、焦っていた。 周囲の既婚友人は、次々妊娠して、可愛い赤ちゃんを抱いている。 知らせが届く度、喜び半分切なさ半分。 そんな私の心情を、義母は理解する様子なし。 ある日、とうとう義母の口から恐ろしい質問が飛んできた。 「あんたら、週に何回エッチしよるん?」 えええやだもうエッチな質問ねえ~~~~! などと頬を染めて悲鳴を上げる可愛い反応など出来るわけもなく。 私は絶句した。 こんなの、実の親にも親友にも尋ねられたことない。 嫁いで半年に満たない嫁に、身も蓋もない事を! ……とりあえず、笑って「数えてない」と洩らしておいた。 数週間後、再び汚物入れにナイロン袋を被せた私は、次の義母の反応に恐怖を抱きながらトイレを後にした。 そして、とうとう来た来た、お決まりの台詞だ。 「あんたら、病院でちゃんと調べてもらったら?」 余計なお世話である。 だいたい結婚してまだ半年なのに、なんで不妊と決めつけるんだろう。 よく考えて欲しい。 妊娠って、たった5日ほどの生存期間しかない卵子が、長旅に耐え抜いた精子と巡り会って成立する、奇跡的で神秘的な営みなのだ。 急かされ焦って無理こやいこがむしゃらに勤しむもんじゃない。 私は本気でイライラした。 パイの実爆弾でもぶつけてやろうか。 いや、それはもったいない。 こうなったら検査でもなんでもして、「私は健康です。いつでも妊娠出来ます」と胸を張ってやる。 今に見ておれよ! そんなわけで、近所の産婦人科に初めて足を運んだのだが、思いもよらない診断結果に絶句する羽目になるのだった。  
/1140ページ

最初のコメントを投稿しよう!