プロローグ

2/10
前へ
/10ページ
次へ
 この城に移動したのがいつ頃だったかは覚えていない。  この辺りは複数の小国が密集しているけど、この城だけは街から隔絶された所に在るから誰も近寄ってこなかった。なのに最近(といってもここ2、30年だけど)は幾度となく人が来るようになっている。  勿論、みんなこの手で葬ってやった。  血を抜く量によって動きが鈍くなり、気を失い、目を覚まさなくなる。逆に血を流し込むことでも殺すことはできた。  人間の血なんて飲む気はしないし、飲まなくても死ぬわけでも無いので、最近は専ら後者。  鉄甲冑に身を包んでいようが関係無い。変わるのは、私の家の外観を損ねるソレを遠くに捨てに行くのが億劫になることくらいだろう。  今もまた、街道からこっちに歩いてくる男がいる。1人というのも珍しいが、全く馬鹿な奴だ。  この前来た兵士達は、頬に「近付くな」と彫って街道沿いに吊り下げておいたが、やはり野犬に取られたのだろうか。  日が射している中に出て行くのも体力の無い私には辛い。丁寧に玄関先で迎えてやるとしよう。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加