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「た、の、もー」
声と共に正面のノッカーが叩かれる。どうやら少し馬鹿らしい。少し遊んでみたいな、出来るだけ人間らしい声を出してみようか。
「どうぞ…」
「お?」
不快な音を立てながら、錆びた扉がゆっくりと開いた。鬼灯の様に赤い髪と目を持つ青年だった。
「どうされました…?」
「ん、いや、この辺に吸血鬼がいるって聞いてな、仲良うなれるかと思って探してんだが」
「仲良く…ですか?」
「そ、でも外れみたいだな。こんな可愛いお嬢ちゃんが迎えてくれるとは思っとらんかった」
そう言って男は私の頭に手を置く。そう、今までも誰もが同じような反応をした。まさか10才くらいに見える私が吸血鬼だろうと疑う者は一度も見ていない。
私は頭の上に置かれた彼の左腕を両手で取り、その人差し指を舐めるように口にくわえた。
何度かやってきたが、この動作には特に誰も違和感を持たない。
「で、お嬢ちゃんはここで何してたんだ?両親もこん中におるんか?」
「両親は…亡くなったわ」
「400年程前にね…!」
「あ?なにを…痛っ…!」
やっぱり、いつものように殺して終わろう。
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