孤独な僕に舞い降りた孤独な神様

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 これは、彼の昔々のお話です。そう。孤独だったあの頃の……  彼が幼い頃、彼はとても幸せでした。自分の成長を喜ぶ家族がいて、一緒に遊ぶ友達がいて。  夜になると、ホカホカでおいしいご飯があって、寝るためのベッドがありました……  しかし、幸せなんてそう長く続くものではありません。彼の母が病死したことにより、幸せの歯車はあらぬ方向へ向きを変え、狂い始めていきました。  あんなに優しくて頼りがいのある父が、酒に溺れ、自分に暴力を振るい、あげくの果てには自分を捨てたのです。  彼が父に捨てられた事実は瞬く間に町に広がり、彼と一緒に遊んでいた友達も、もう、彼に近寄ろうともしません。  彼はもう、一人です。自分の成長を喜ぶ家族もいません。一緒に遊ぶ友達もいません。  夜になっても、ホカホカでおいしいご飯も、寝るためのベッドもありません。  もう、あのときのような幸せは崩れ去ったのです。  それでも彼は、孤独な中、生き続けました。もう何年過ぎたかも分かりません。服だってもうボロボロです。  そんな彼の日課は、毎晩毎晩、色々な人の家の中を窓の外から見続けることです。  窓の外からいくら色々な人の家の中を見たって、窓を開けてくれる人なんて一人もいません。  そんなことは彼にも分かっていました。しかし、信じたかったのです。羨ましかったのです。自分もいつか、窓の先のような幸せを取り戻せると……信じたかったのです……  そんな毎日を送る彼。もう、あのときのような幸せは訪れないのでしょうか。  いいえ。そんなことはありません。孤独に耐え、何年もの間、幸せを願い続けてきた彼に幸せが訪れないはずがない。  そう。人生の転機は突然やってくる。何の予兆もなく、突然に……
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