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「孤独は寂しいか? もし、私のような得体の知れないものが突然、お前の前に現れても、お前は喜ぶか?」
彼の頭の中に響く声。彼は驚き、後ろをパッと振り向いた先には、見たこともない……正に得体の知れないものが彼の瞳に映りこみました。
彼の瞳に映りこんだその得体の知れないもの。なんといえばいいんでしょう。
透明な何かに白い布を被せたようなその姿。目と口は、大雑把に目と口の形に布が切られているので、かろうじて分かります。
「うん。喜ぶよ。とっても嬉しい」
彼が得体の知れないものを見て、笑顔でそう言葉を返す。
得体の知れないものは、彼の反応に驚いた様子。
「お前……私を見て、恐怖を感じないのか? こんな生物みたことないだろう? なぜ、私に笑顔で接する? 私は今までこの姿を見て逃げていった人間を沢山見てきたというのに……」
「恐怖なんて一つも感じないよ。だって、僕に話しかけてくれる人なんていなかったんだもの。久しぶりに言葉を口に出せて、とても嬉しいんだ。むしろ、もっと沢山、お話したいなぁ……なんて」
どうでしょう。彼は怖がるどころか、逆にもっと話がしたいと、得体の知れないものに頼みました。
得体の知れないものは更に驚きます。これは今までにはないケースだったのですから。
「わ……私も、お前ともっと話しをしたい。わ……私と、その……友達になってはもらえないだろうか?」
「こんな僕でいいの? 僕と友達になってくれるの? 本当にいいの? 嬉しい。凄く嬉しい! 僕、グリュっていうんだ。あなたはなんて名前なの?」
グリュのテンションは最高潮です。
それもそのはず。何年もこの光景を信じ続けてきたのですから。
ちなみに、得体の知れないものは、町歩く人々には姿が見えていません。なので、町歩く人々は、突然、大声を上げたグリュに目がいきます。人の瞳にクッキリとグリュの姿が映るのも、久しぶりのことです。
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