孤独な僕に舞い降りた孤独な神様

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「私の名前は……私の名前……実はないんだ。私は孤独の神様でな。孤独に生きる人に幸せや勇気を与えるのが仕事のはずだったんだが、見ての通りこの姿だ。みんな逃げていってしまう。始めは仕事として幸せや勇気を与えようとしていたよ。でも、次第に私自身も孤独になってしまった。今では、仕事としてではなく、本気で誰かと友達になりたいのだ。そして、勇気を与え、私も勇気をもらいたかった。そんなときに現れてくれたのがグリュだ。グリュはグリュといういい名前をもっている。しかし、私には名前もない……」 「あるよ神様。神様っていういい名前があるじゃない。神様は僕に勇気をくれたよ。誰がなんといおうと、神様は僕の神様だ。なんだかごちゃごちゃになっちゃうけど、神様は僕の神様なんだ!」  こうして、孤独の神様には神様という名前が名づけられました。  もう、グリュは孤独じゃない。神様だって孤独じゃない。グリュと神様はもう友達です。苦しみを喜びを感動を分かち合える友達なのです。  ほら、もう歩きながら喋っています。グリュの人生。神様の人生。それぞれの人生を話し合える仲なのです。  今日も、明日も、明後日も、二人は話し続けます。グリュが孤独な人生の中で見つけてきた秘密の場所だって教えてあげます。神様も嬉しそうにグリュの話を聞き、秘密の場所に驚きます。  ようやくです。どれぐらい過ぎたか分からない年月をかけて、あらぬ方向へ向きを変え、狂っていた幸せの歯車が、ようやく正常に動き始めました。  二人は今日も、グリュが見つけた秘密の場所で夕食の調達。  そこは人気の無さそうな森で、木に生っている果物は、誰の手にも触れられることなく無数に生っています。正に、グリュだけの果物。秘密の場所なのです。  木に生っている果物を取り、おいしそうに食べるグリュ。それを見つめる神様。  ジッと果物を見つめている神様に気づいたグリュ。「食べてみる?」と一つ果物を神様に差し出しました。  しかし、神様は果物を食べることは出来ないので「私は神様なので食べることは出来ない」と断りました。そして、ハハハと笑いました。  そんな他愛もない会話がとても楽しいのです。今まで孤独に生きてきたグリュと神様にとっては、他の誰よりも楽しいのです。
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