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「お前バカだな」
そう言われるのは、初めてじゃない。
自分でも思っていることを、他人から言われても、痛みなんて感じない。
ましてや、友人の彼からの言葉は、何度も聞いてる。
「あいつ、お前の気持ち知らないまま結婚したぞ」
テーブルの上に置かれてる葉書。幸福そうな二人の顔。
「知ってるよ」
前から知っていた。
知っていて、知らないふりをした。
「バカだな、お前…」
私の部屋で、彼が、スーツのネクタイを何気なくほどく。
ほどける音が、何かのスイッチを入れたみたいに、心を掻き立て始めた。
ダメ。
この腕に捕まると、身動きが取れない…。
唇が触れると、止まらない。
もっと欲しくなる。
「あいつが好きでも、俺を受け入れるんだな…」
「…っ!」
さらに、深いキス…溶けそう。
もうダメ。
「早く、俺のものになっちゃえよ」
激しく求められると嬉しくて。
あなたのことが好き。
って、なかなか言えない私は、彼の言う通りバカだもの。
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