微笑む女

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静香が俺を選ぶとは思わなかった。 静香は若い。 俺は流行りの歌も知らない。 同年代の男友達も居るだろう。 こんなくたびれたオジサンと付き合わなくとも他に相手は腐る程居る。 それでも静香は俺を選んだ。 もしやファザコンという奴なのだろうか。 元は、俺の勤める会社の受付嬢であった静香。 彼女は入社早々、男性社員から注目の的になっていた。 特に若い独身者は、彼女の関心を引こうと躍起になっていた。 歳の離れた俺は、元から妙な期待など無かった。 取引先の人間が来社した際に何度か会話をした程度だったはずだ。 確かに目の保養にチラチラと見ていたかもしれないが、それは社内の男性なら誰でもしていた事だった。 特別、色目を使った覚えは無い。 それなのに或る日突然、静香は小さなメモを俺に手渡した。 『 野沢部長様 御相談したい事が有りますので御迷惑で無ければ、今度お時間を頂けないでしょうか? 静香 』 メモには携帯番号とメールアドレスも記されていた。
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