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彼が必死な理由は、すぐにわかった。
その車に更にカメラが寄っていくと、車を取り囲む様に、数人の人間が見て取れた。
何故か、その人間達は、車の上に乗った男に、必死に手を伸ばしている。
ゴルフクラブを持った男は、必死にクラブを振り下ろしている。
何だか、おかしな光景だ。
この騒動はデモのはずだ。
だったらあの車の周りにいる人間達は、車をよじ登って、ゴルフクラブの男を捕まえたっていいはずだ。
でも、いくら経っても、車の周りの人間達は、車に登ろうとはしない。
むしろ、登れないかのように、ひたすらにゴルフクラブの男に向けて、手を掲げている。
そう、それはまるで・・・
目の前にぶら下がる餌を食べられない猛獣であるかの様に。
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