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どこか遠くを見ているのかな。
一旦言葉を止めて沈黙を作るルア様の気配から、そんな風に考えた。
「そう。何も無い。闇も光も関係のない世界。そんな世界があるとして。闇も光も関係ないから、オレが遠い未来に消滅したら……そこでずっと、お前と一緒にいられる」
「……そんな世界……あるわけ……」
否定的な事を言ってしまったけど、心は嬉しさに満たされていた。
儚い幻想だろうと、淡い夢物語だろうと、ルア様の口から出た事が何よりも嬉しい。
たとえ、わたしのために吐いた嘘だと――。
「……うっ……!」
ルア様が指で額を弾いた。思いきり、パチンと。
消滅するわたしを前にして、全く躊躇せず、容赦なしに。
ルア様らしい……らしくはあるけど、あんまりだ……。
「誰が決めた」
腕を動かせないわたしは摩る事もできず、ジンジン痛む額にひたすら我慢していると、強い口調でルア様がそう言い放った。
わたしの耳の奥まで届くような、自信に溢れた声。
「そこで終わりなんて誰が決めた? そんな世界が無いなんて誰が言った?
もちろんあるとも聞いた事は無いけどな。
オレは、あると信じる」
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