序章  覚醒されし力

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 時は、今と同じ二十二世紀――  季節は夏であり、いつも通る通学路から、街路樹が夕焼けでより綺麗に見える時期でもある――  その夕焼けに背を向けて、スキップしながら下校している一人の学生がいた。 「今日は鍋パーティーだ~」  暑い夏の日に鍋とは、とツッコミ所は山ほどあるだろう。  しかし、それについてはとりあえず置いておき、この人物、もとい俺についての自己紹介をしよう。  名前は新道匠(しんどうたくみ)。  神野高校の二年生で、身長は百八十センチあたり。  ちょっぴりつんつんした黒い髪の持ち主で、ブレザー越しでもわかる細身に、眼鏡を掛けているため「貧弱な頭脳派っぽい」とよく言われる。  しかし人は見かけによらない。帰宅部に所属しているが、俺の身体能力は高く、大抵の運動部にはまず負けないと自負している。  ただ、勉強ばかりは苦手で、いつも赤点ぎりぎり。  好きな色は黒等の地味な色。休日でも制服のような、ピシッとした色の服を着ないと落ち着かない。  とまあ、特筆すべきところはこの程度で――  不意に胸元から、携帯のバイブレータが伝わる。  そうだ……肝心なことを書き忘れていた。俺にはある秘密がある。それも、かなり特殊な秘密が。  ひとまず俺は携帯を取り出して、画面を開く。予想通りの内容に軽く落胆して、元きた道を逆走する。 「せっかくの鍋パーティーが……ミリーのバカ――!!」  涙声になりながらも、携帯の指示に従い、ある場所へと走っていく。  俺の秘密については、半年前の出来事から話すべきであろう。俺がミリーと知り合うまでに起きた、出来事について――
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