無くし者

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「空…綺麗だ。」 「誤魔化さないで!!」 本当に空、綺麗だよ。 誤魔化す気なんてないよ…半分しか。 「無くし者。」 そう俺は呟いた。 「…なくし……もの?」 「あぁ無くし者。」 「何を無くしたの?携帯?筆箱?あっ分かった財布だ。」 少しはしゃぎ気味に話す。 だが意味が通じていない。 いや、通じてはいけない。 だから俺は言葉を切った。 彼女も大人しくなり、俺の横にいた。 少し沈黙の後、彼女が口を開いた。 「私の知っている物?」 「あぁ。君も良く知っている者さ。」 すると彼女は頭を捻り考え始める。 そんな彼女を見ると頬が緩む。 「って!!それが話さないのと、どう関係あるのよ!?」 やっと気付いたか…。 将来、騙されるぞ…俺に。 俺はすっと立ち上がり、給水タンクのはしごに向かう。 しかし彼女に腕首を捕まれ、前に進めない。 「何をしてる?」 「どうして逃げるの?私は真剣に話しているに。」 彼女は寂しいそうな顔をした。 「欲張りは翼をもぎ取られて、地に堕ちる。」 「私のこと?」 「いや。 俺のことさ」
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