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涙
涙をこらえる為に
あたしは歌を歌う。
涙をこらえる為に
あたしは大声で笑う。
泣きながら生まれたはずなのに
冷たい水が溢れないように自分にブレーキをかけて、嘘をつき、上手く振る舞う術を手に入れていく。
泣きながら生まれたはずなのに
素直に泣き喚く事も出来ずに嘘の自分を作り上げ、弱さを隠し、「私は大人だ」と言う。
あたしはまた、歌をうたい涙をこらえる。
あたしはまた、大声で笑い涙をこらえる。
そしてあたしは
一人、声を殺して冷たい涙を流す。
誰かに少しでも届くように泣き声はあるのに…
泣く場所も見つからないまま、心の声に耳も傾ける事もせず前を向けども進めずにいた。
誰かに届くように泣き声はあるのに…
強くあればあろうとするほど、自分を見失ない、臆病な泣き声はさらに小さくなった。
ふと、立ち止まって空を見上げる。
とても鮮明で何もかも見透かされているよう…
あたしの頬に温かい雫がこぼれた。あたしはしゃがみこみ、声をあげて泣いた。
あたしは生きている。
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