1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

涙をこらえる為に あたしは歌を歌う。 涙をこらえる為に あたしは大声で笑う。 泣きながら生まれたはずなのに 冷たい水が溢れないように自分にブレーキをかけて、嘘をつき、上手く振る舞う術を手に入れていく。 泣きながら生まれたはずなのに 素直に泣き喚く事も出来ずに嘘の自分を作り上げ、弱さを隠し、「私は大人だ」と言う。 あたしはまた、歌をうたい涙をこらえる。 あたしはまた、大声で笑い涙をこらえる。 そしてあたしは 一人、声を殺して冷たい涙を流す。 誰かに少しでも届くように泣き声はあるのに… 泣く場所も見つからないまま、心の声に耳も傾ける事もせず前を向けども進めずにいた。 誰かに届くように泣き声はあるのに… 強くあればあろうとするほど、自分を見失ない、臆病な泣き声はさらに小さくなった。 ふと、立ち止まって空を見上げる。 とても鮮明で何もかも見透かされているよう… あたしの頬に温かい雫がこぼれた。あたしはしゃがみこみ、声をあげて泣いた。 あたしは生きている。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!