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俺がその様子を不思議そうに見ていると、やれやれといった表情で社長は話す。
「アンタね。ずっとクールなキャラでやってきたんだから、いきなり生気の漲った顔で元気に挨拶されたんじゃ、スタッフ達も戸惑うわよ。」
あー。なるほど。納得だ。確かに今までの俺だったら自分から挨拶することもなかったっけ。
俺がなんとなく苦笑していると、不意に首に腕が回され、そのままグイっと引っ張られる。
社長の脇に抱えられた状態になり、空いた社長の右手が俺の頭をグイグイと押す。
「ちゃんとステージでは、いつものキャラになるのよ。」
俺は、意味がわからなかった。なぜ?今までのやる気がない姿に戻れって事?
でも、すぐに次の社長の言葉で理解出来た。
「あんたの今までだって丸っきり意味がなかったものじゃないわ。今までのあなたを見て応援してくれた娘達もたくさんいるはずよ。じゃなかったら、私がすぐにあんたなんか脱退させちゃてるはずだし。その上でやる気になった新しい自分をファンの娘たちに見せてあげなさい。」
そういうと、首にかかっていた社長の腕の力が緩む、俺は腕の中から脱出すると思いっきりよく返事する。
俺の返事を聞いた社長は、また額に手を当てて、苦笑い。
「あんた本当にわかってんのかしら。」
あ?あれ?また俺間違えちゃったかな?つい苦笑いでごまかしてしまう。
「まぁいいわ。」
社長が俺の背中を思いっ切りよく平手で打つ。
かー。痛いってー!!
「さぁクールに決めてらっしゃい。」
俺は社長に背中を押され。ステージに向かう。このステージが終わったら、もうこの場所には帰って来れない。悔いは残さないように行こう。
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