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男の名は宏(ヒロ)
女の名は愛美(アイミ)
この時、男はまだ世の中の暗い部分にいた。女は知り合い花屋でアルバイトをしていた。
「あの人、滅多に来ないけどいつもサボテンを買って帰るのよ。何かありそうよね、あの雰囲気?」
また、始まった。裕子さんはいつもお客さんの生活を勝手に想像する。
「私は、あの人私と同じ年位の高校生に見えますよ。」
愛美は心の中のことにシッカリと鍵をかけておく。
「高校生な分けないじゃん。あの人、あそこのアパートに一人で住んでて、夜中に黒スーツで出掛けたりするのを見たって、肉屋の麻子さんが言ってよ。」
肉屋の麻子さんって、噂の神様じゃん!!なんで、信じてるの裕子さん!!もう、めんどくさいから真実を教えよう。
「実は私、あの人知ってるんです。あの丘の上の男子校に通ってて、たまにうちの近くの教会でピアノ引いてますよ。」
「えっ!!知ってるだったら教えてよ!!愛美のケチ。どうせまた、私をからかって遊んでたんでしょ!!このっ!!」
裕子は愛美の頭を拳でグリグリとした。
「痛い。痛いです。止めてください裕子さん。」
こんな日々を繰り返しながら、2ヶ月が過ぎ、季節が冬に変わっていた。
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